共通テスト(公民) 過去問
令和8年度(2026年度)本試験
問9 (公共,倫理(第3問) 問9)
問題文
生徒Gは、授業後に次のレポートを作成した。場面1~3の会話文を踏まえ、( ア )~( ウ )に入る語句の組合せとして最も適当なものを、後の選択肢のうちから一つ選べ。
場面1 ある日の授業の終わりに、先生Tが悪について取り上げた。
T:今日の授業のテーマは善でしたが、最後にちょっと悪についても考えてみましょうか。「悪」が付く言葉にはいろいろありますね。例を挙げてもらえますか。
G:a「悪人」などがすぐに思い付きますが、「悪天候」のように、自然現象に関しても言いますね。
T:そうですね。これについてHさんはどう思いますか。
H:「悪人」の「悪」は道徳的な悪ですが、「悪天候」は自然現象なので道徳とは関係ないと思います。
T:そのとおりですね。しかし、両者は、多くの場合、人に害をもたらすという意味では共通しています。Gさんは両者の違いについて、どう思いますか。
G:道徳的悪については、b法律やルールで悪い行為を規制すれば被害をなくすことができると思います。でも、自然現象それ自体をルールで禁止することなんてできません。
T:面白い論点が出ましたね。
H:確かに。それでも、全ての道徳的悪にルールで対応できるのか疑問が残ります。さらに、c何を悪とみなすかは人によって異なるから、ルールを作っても、何に適用するのか意見が一致しないんじゃないでしょうか。
T:なるほど。次回の授業ではみなさんの意見を聞きますので、道徳的悪にルールで対応できるか、各自で考えておいてください。
場面2 放課後、生徒Gと生徒Hが話し合っている。
G:何を悪とみなすかが人によって違っても、理屈で説明すれば、誰もが納得できるルールができるんじゃないかな。
H:いやいや、理屈の部分での意見の違いと、d感情の部分での意見の違いとがあると思うよ。例えば、幼稚園で遊ぶ子どもの声が気になるって言う人がいるよね。
G:もうちょっと静かにできないのかな、って?
H:大きな声を出して遊ぶのは子どもにとってよいことだという意見に納得はしていても、どうしても自分には我慢できないという人の感情も理解できるんだ。理屈と感情のどっちが大事かという話ではなくて、どっちも大事だから、両方を満足させるルールを作るのは難しいと思う。
G:うーん。それでも、e人によって意見が違うときに、どの部分で一致・不一致が生じているのかを見定めることができれば、違いを見極めた上で、誰もがある程度は合意できる最低限のルールは作れるんじゃないかな。
H:仮にそうしてルールを作ることができたとしても、まだ考えるべきことがあるよ。ルールで禁じられていても、f自分の心の中を見つめると、とんでもなくひどいことをやってしまおうと思っているときがある。
G:確かに、ルールでは心の中までは、規制できないね。でも、心の中で思っているだけで行動に移していないのなら、それでいいんじゃないの。
H:そうかもしれない。だけど、別の問題もあるよ。
G:どんな問題?
H:誰もが自分の行為の結果を完全に把握できるわけではないよね。被害が出ているのに、それがわからないこともあるよ。
G:それはそのとおりだ。
場面3 先生Tは、予告どおり、次の回の授業で悪について取り上げた。
T:では、改めて、道徳的悪について考えてみましょう。何を悪とみなすかは人によって異なるという意見が出ていましたね。私たちは、g悪にどう向き合うべきでしょうか。
G:あの後、Hさんと議論をして、理屈と感情の違いに注意してルールを作れば生じている害に対処できる、という結論になりました。
H:ルールで対処できない場合としては、悪をなそうとする心の中の問題と、人は自分の行動の結果を完全には知らないという問題があるとわかりました。
T:なるほど。私たちは、誰かが害を被っているのにそれに気付かず、無自覚のうちに害をもたらしている、ということがありますね。その場合、合意を得てルールを作ろうとはならないように思われます。この問題についてはどう考えますか。
G:私たち一人ひとりが自分の行動の結果を意識して、害に気付くことができるよう努力するしかないと思います。
H:一人ひとりの努力には限界がありますよ。それに、自覚がないまま悪に加担している状態が当たり前になってしまうと、それが当たり前じゃないと気付くのは難しいのではないでしょうか。
G:だったら、自分一人の力で全てを知ろうとするのではなく、互いに教え合えばよいんじゃないかな。
H:でも、誰かが被害を指摘しているのに、他の人々がそれを軽視したり、もっともらしい言い分をもち出して取り合おうとしない、ということもありそうですよ。
T:悪を許してしまう悪、というわけですか。悪の根は深いですね。それでも、悪を防ぐためには、過ちを指摘し合えるようなh他の人々とのつながりがやはり不可欠だと思います。
レポート
ルールを作ることで道徳的な悪に対処できるだろうか。ルールを作る上では、合意を形成することが大切だが、そのためには、( ア )目を向ける必要がある。これはHさんとの対話から学んだことだ。
だが、授業やHさんとの議論を通じて、ルールは万能ではないことにも気付かされた。( イ )が良心に基づく内的制裁の重要性を説いているのも、そのことと関連しているだろう。このように、ルールだけでは対処できない事柄についても考えていく必要があるだろう。また、Hさんが言う( ウ )を防ぐためには、人々のつながりを通じて、互いに過ちを指摘し合うことも不可欠である。
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問題
共通テスト(公民)試験 令和8年度(2026年度)本試験 問9(公共,倫理(第3問) 問9) (訂正依頼・報告はこちら)
生徒Gは、授業後に次のレポートを作成した。場面1~3の会話文を踏まえ、( ア )~( ウ )に入る語句の組合せとして最も適当なものを、後の選択肢のうちから一つ選べ。
場面1 ある日の授業の終わりに、先生Tが悪について取り上げた。
T:今日の授業のテーマは善でしたが、最後にちょっと悪についても考えてみましょうか。「悪」が付く言葉にはいろいろありますね。例を挙げてもらえますか。
G:a「悪人」などがすぐに思い付きますが、「悪天候」のように、自然現象に関しても言いますね。
T:そうですね。これについてHさんはどう思いますか。
H:「悪人」の「悪」は道徳的な悪ですが、「悪天候」は自然現象なので道徳とは関係ないと思います。
T:そのとおりですね。しかし、両者は、多くの場合、人に害をもたらすという意味では共通しています。Gさんは両者の違いについて、どう思いますか。
G:道徳的悪については、b法律やルールで悪い行為を規制すれば被害をなくすことができると思います。でも、自然現象それ自体をルールで禁止することなんてできません。
T:面白い論点が出ましたね。
H:確かに。それでも、全ての道徳的悪にルールで対応できるのか疑問が残ります。さらに、c何を悪とみなすかは人によって異なるから、ルールを作っても、何に適用するのか意見が一致しないんじゃないでしょうか。
T:なるほど。次回の授業ではみなさんの意見を聞きますので、道徳的悪にルールで対応できるか、各自で考えておいてください。
場面2 放課後、生徒Gと生徒Hが話し合っている。
G:何を悪とみなすかが人によって違っても、理屈で説明すれば、誰もが納得できるルールができるんじゃないかな。
H:いやいや、理屈の部分での意見の違いと、d感情の部分での意見の違いとがあると思うよ。例えば、幼稚園で遊ぶ子どもの声が気になるって言う人がいるよね。
G:もうちょっと静かにできないのかな、って?
H:大きな声を出して遊ぶのは子どもにとってよいことだという意見に納得はしていても、どうしても自分には我慢できないという人の感情も理解できるんだ。理屈と感情のどっちが大事かという話ではなくて、どっちも大事だから、両方を満足させるルールを作るのは難しいと思う。
G:うーん。それでも、e人によって意見が違うときに、どの部分で一致・不一致が生じているのかを見定めることができれば、違いを見極めた上で、誰もがある程度は合意できる最低限のルールは作れるんじゃないかな。
H:仮にそうしてルールを作ることができたとしても、まだ考えるべきことがあるよ。ルールで禁じられていても、f自分の心の中を見つめると、とんでもなくひどいことをやってしまおうと思っているときがある。
G:確かに、ルールでは心の中までは、規制できないね。でも、心の中で思っているだけで行動に移していないのなら、それでいいんじゃないの。
H:そうかもしれない。だけど、別の問題もあるよ。
G:どんな問題?
H:誰もが自分の行為の結果を完全に把握できるわけではないよね。被害が出ているのに、それがわからないこともあるよ。
G:それはそのとおりだ。
場面3 先生Tは、予告どおり、次の回の授業で悪について取り上げた。
T:では、改めて、道徳的悪について考えてみましょう。何を悪とみなすかは人によって異なるという意見が出ていましたね。私たちは、g悪にどう向き合うべきでしょうか。
G:あの後、Hさんと議論をして、理屈と感情の違いに注意してルールを作れば生じている害に対処できる、という結論になりました。
H:ルールで対処できない場合としては、悪をなそうとする心の中の問題と、人は自分の行動の結果を完全には知らないという問題があるとわかりました。
T:なるほど。私たちは、誰かが害を被っているのにそれに気付かず、無自覚のうちに害をもたらしている、ということがありますね。その場合、合意を得てルールを作ろうとはならないように思われます。この問題についてはどう考えますか。
G:私たち一人ひとりが自分の行動の結果を意識して、害に気付くことができるよう努力するしかないと思います。
H:一人ひとりの努力には限界がありますよ。それに、自覚がないまま悪に加担している状態が当たり前になってしまうと、それが当たり前じゃないと気付くのは難しいのではないでしょうか。
G:だったら、自分一人の力で全てを知ろうとするのではなく、互いに教え合えばよいんじゃないかな。
H:でも、誰かが被害を指摘しているのに、他の人々がそれを軽視したり、もっともらしい言い分をもち出して取り合おうとしない、ということもありそうですよ。
T:悪を許してしまう悪、というわけですか。悪の根は深いですね。それでも、悪を防ぐためには、過ちを指摘し合えるようなh他の人々とのつながりがやはり不可欠だと思います。
レポート
ルールを作ることで道徳的な悪に対処できるだろうか。ルールを作る上では、合意を形成することが大切だが、そのためには、( ア )目を向ける必要がある。これはHさんとの対話から学んだことだ。
だが、授業やHさんとの議論を通じて、ルールは万能ではないことにも気付かされた。( イ )が良心に基づく内的制裁の重要性を説いているのも、そのことと関連しているだろう。このように、ルールだけでは対処できない事柄についても考えていく必要があるだろう。また、Hさんが言う( ウ )を防ぐためには、人々のつながりを通じて、互いに過ちを指摘し合うことも不可欠である。
- ア:感情ではなく論理に イ:ベンサム ウ:感情的に我慢できないものとしての悪
- ア:感情ではなく論理に イ:ベンサム ウ:自覚がないままに加担してしまう悪
- ア:感情ではなく論理に イ:J. S. ミル ウ:感情的に我慢できないものとしての悪
- ア:論理だけではなく感情にも イ:ベンサム ウ:自覚がないままに加担してしまう悪
- ア:論理だけではなく感情にも イ:J. S. ミル ウ:感情的に我慢できないものとしての悪
- ア:論理だけではなく感情にも イ:J. S. ミル ウ:自覚がないままに加担してしまう悪
正解!素晴らしいです
残念...
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