大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和7年度(2025年度)本試験
問18 (公共,倫理(第5問) 問4)

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問題

大学入学共通テスト(公民)試験 令和7年度(2025年度)本試験 問18(公共,倫理(第5問) 問4) (訂正依頼・報告はこちら)

次の場面1および場面2・場面3の会話文を読み、後の問いに答えよ。なお、会話中の生徒Fと生徒Gおよび先生Rは、各々全て同じ人物である。

場面1  生徒Fと生徒Gが、後の資料を見ながら次の会話をしている。

F:記憶は、覚えていることだけを指すものじゃないんだね。
G:うん、心理学の本によると、記憶には、覚えるという「符号化(記銘)」、覚えておく「貯蔵(保持)」、覚えたことを思い出す「検索(想起)」、この三つの段階があるんだって。ちょっと、この資料を見てくれる?これは、( ア )に保持されている、言葉の意味についての情報が、( イ )の段階で図形の記憶に影響することを示そうとした実験なんだ。
F:へえ、記憶はもっと単純なものだと思っていたけど、実験の結果を見ると、言葉が表すものに引きずられて「記憶の変容」が起きることがわかるね。

場面2  次の生徒Fと生徒Gの会話は、場面1の続きである。

F:記憶もそうだけど、自分では確かだと思っていることでも、間違っていたことに後から気付いたり、気付かされたりすることってあるよね。
G:例えば、どんなこと?
F:この間の授業で見せてもらった『犯罪白書(令和四年版)』のデータで知ったんだけど、「少年による刑法犯」って、ここ数十年、多少の増減はあるものの、総じて減っているんだよね。(a)テレビでよく少年犯罪の報道をしていたから、てっきり増えていると思ったんだけど、実際には少年の人口比で見ても、件数は減っているみたいだね。
G:思い込んでいることといえば、昨日、同じクラスの人が文化祭の準備に遅れてきた時、(b)本人が準備に乗り気でないから遅刻したと思ったんだよね。でも、本当は乗っていたバスが事故による渋滞に巻き込まれて遅れたらしい。
F:それって、遅れた理由がわかったからよかったけど、知らないままでいたら、相手のことを誤解したままになっていたかもしれないね。
G:意識していないところで、思い込みで判断してしまうって、怖いことだね。
F:こういう思考や認知の偏りのことを「認知バイアス」って言うんだっけ。

場面3  生徒Fと生徒Gが話しているところに、先生Rが通りがかって会話に加わった。

R:認知バイアスについて話しているのですね。
G:そうなんです。認知バイアスってちょっと怖いな、と思って。
R:ただ怖がるのではなく、対処法を考えることも大事です。まず、どんな場面で認知バイアスが起こりやすいかを知り、その上で(c)クリティカル・シンキング、すなわち批判的思考ができるように心掛けることです。
G:批判的思考かあ。人の考えを否定する力が必要ということですか?
R:いいえ、違います。ここでいう「批判」は、人を責めたり攻撃したりするということではなく、よく検討するという意味です。そのため、他人の考えだけでなく、自分の考えも批判の対象になります。つまり、批判的思考とは、自他の主張の内容を論理的・客観的に検討するということです。そうした検討を経ることで、認知バイアスの影響をできるだけ抑えた判断ができるようになるのです。
F:でも、認知バイアスを全てなくすことはできないですよね。
R:そうですね。それに、認知バイアスというと、よくないものみたいだけど、役に立つこともあります。例えば、認知バイアスのおかげで効率的な判断ができるという側面もあります。また、悲観的になりすぎず、心の健康が保てる場合もあります。ですから、認知バイアスをただ抑え込むのではなく、むしろ、活用するという発想も必要かもしれません。
F:なるほど。それなら、(d)認知バイアスがあっても、できるだけ問題が生じない環境を整えるという対処法もありえますね。
G:つまり、(e)認知バイアスへの対処法には二つの方向性があるのですね。

下線部(d)に関連して、次の説明文は、医学研究で用いられる「二重盲検法」について書かれたものである。この説明文中の下線部は、どのような認知バイアスに対処する目的で行われていると考えられるか。最も適当なものを、後の選択肢のうちから一つ選べ。

説明文
ここでは、患者を対象とする新薬の有効性・安全性を調べる試験(治験)を例にとる。患者は、まず治験の流れや、新薬に期待される効果、副反応などについて説明を受け、理解して、治験に参加することに同意する。その後、治験実施責任者によって、患者は新薬投与群とプラセボ投与群のどちらかに無作為(ランダム)に振り分けられる。プラセボとは、新薬と外見では区別できないが、その病気に効果がないことがわかっている薬剤(偽薬)である。治験の間、患者は新薬とプラセボのどちらの薬剤を投与されたかを知らない。また、患者にどちらの薬剤が投与されたか、投与した担当医師も知らない。この条件で二つの群を比較することにより、新薬の効果と安全性を評価するのが、二重盲検法である。
※実際の治験では、参加する患者の保護のために、ほかにも様々な工夫・配慮がなされる。
  • 新薬の効果について説明されたために、本当は効果が出ていないにもかかわらず、効果が生じているように患者自身が感じる、というバイアス。
  • 新薬の副反応について説明されたために、プラセボ投与群であるにもかかわらず、副反応が生じているように患者自身が感じる、というバイアス。
  • 新薬の効果を期待するために、本当は効果が出ていないにもかかわらず、患者に効果が生じているように担当医師が思う、というバイアス。
  • 新薬の副反応を心配するために、プラセボ投与群であるにもかかわらず、患者に副反応が生じているように担当医師が思う、というバイアス。

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