大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和7年度(2025年度)本試験
問17 (公共,倫理(第5問) 問3)

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問題

大学入学共通テスト(公民)試験 令和7年度(2025年度)本試験 問17(公共,倫理(第5問) 問3) (訂正依頼・報告はこちら)

次の場面1および場面2・場面3の会話文を読み、後の問いに答えよ。なお、会話中の生徒Fと生徒Gおよび先生Rは、各々全て同じ人物である。

場面1  生徒Fと生徒Gが、後の資料を見ながら次の会話をしている。

F:記憶は、覚えていることだけを指すものじゃないんだね。
G:うん、心理学の本によると、記憶には、覚えるという「符号化(記銘)」、覚えておく「貯蔵(保持)」、覚えたことを思い出す「検索(想起)」、この三つの段階があるんだって。ちょっと、この資料を見てくれる?これは、( ア )に保持されている、言葉の意味についての情報が、( イ )の段階で図形の記憶に影響することを示そうとした実験なんだ。
F:へえ、記憶はもっと単純なものだと思っていたけど、実験の結果を見ると、言葉が表すものに引きずられて「記憶の変容」が起きることがわかるね。

場面2  次の生徒Fと生徒Gの会話は、場面1の続きである。

F:記憶もそうだけど、自分では確かだと思っていることでも、間違っていたことに後から気付いたり、気付かされたりすることってあるよね。
G:例えば、どんなこと?
F:この間の授業で見せてもらった『犯罪白書(令和四年版)』のデータで知ったんだけど、「少年による刑法犯」って、ここ数十年、多少の増減はあるものの、総じて減っているんだよね。(a)テレビでよく少年犯罪の報道をしていたから、てっきり増えていると思ったんだけど、実際には少年の人口比で見ても、件数は減っているみたいだね。
G:思い込んでいることといえば、昨日、同じクラスの人が文化祭の準備に遅れてきた時、(b)本人が準備に乗り気でないから遅刻したと思ったんだよね。でも、本当は乗っていたバスが事故による渋滞に巻き込まれて遅れたらしい。
F:それって、遅れた理由がわかったからよかったけど、知らないままでいたら、相手のことを誤解したままになっていたかもしれないね。
G:意識していないところで、思い込みで判断してしまうって、怖いことだね。
F:こういう思考や認知の偏りのことを「認知バイアス」って言うんだっけ。

場面3  生徒Fと生徒Gが話しているところに、先生Rが通りがかって会話に加わった。

R:認知バイアスについて話しているのですね。
G:そうなんです。認知バイアスってちょっと怖いな、と思って。
R:ただ怖がるのではなく、対処法を考えることも大事です。まず、どんな場面で認知バイアスが起こりやすいかを知り、その上で(c)クリティカル・シンキング、すなわち批判的思考ができるように心掛けることです。
G:批判的思考かあ。人の考えを否定する力が必要ということですか?
R:いいえ、違います。ここでいう「批判」は、人を責めたり攻撃したりするということではなく、よく検討するという意味です。そのため、他人の考えだけでなく、自分の考えも批判の対象になります。つまり、批判的思考とは、自他の主張の内容を論理的・客観的に検討するということです。そうした検討を経ることで、認知バイアスの影響をできるだけ抑えた判断ができるようになるのです。
F:でも、認知バイアスを全てなくすことはできないですよね。
R:そうですね。それに、認知バイアスというと、よくないものみたいだけど、役に立つこともあります。例えば、認知バイアスのおかげで効率的な判断ができるという側面もあります。また、悲観的になりすぎず、心の健康が保てる場合もあります。ですから、認知バイアスをただ抑え込むのではなく、むしろ、活用するという発想も必要かもしれません。
F:なるほど。それなら、(d)認知バイアスがあっても、できるだけ問題が生じない環境を整えるという対処法もありえますね。
G:つまり、(e)認知バイアスへの対処法には二つの方向性があるのですね。

下線部(c)に関して、哲学者の思想をクリティカル・シンキングに対応させた場合、何が重要と考えられるか。その内容として適当でないものを、次のうちから一つ選べ。
  • ソクラテスは「汝自身を知れ」という格言を捉え直したが、クリティカル・シンキングに対応させた場合、反省的に自分の認知そのものを認知の対象とするメタ認知が重要である。
  • J.S.ミルは誰もが干渉を受けずに個性を発展させ自由に討論することを重視したが、クリティカル・シンキングに対応させた場合、他者の視点に立ち多角的に考えることが重要である。
  • デカルトは理性を用いて確実な真理から演繹法でほかの知識を導き出すべきだと考えたが、クリティカル・シンキングに対応させた場合、いくつかの前提から論理的に結論を導く推論を活用することが重要である。
  • デューイは知性を問題解決の道具として用いるという道具主義を唱えたが、クリティカル・シンキングに対応させた場合、簡略化された直感的な解決手順であるヒューリスティックに頼らない態度が重要である。

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この過去問の解説 (2件)

01

クリティカルシンキングとは、

物事の前提や根拠について批判的な視点から疑ってみることで、

課題や問題の本質を深く考える思考法のことです。
 

選択肢1. ソクラテスは「汝自身を知れ」という格言を捉え直したが、クリティカル・シンキングに対応させた場合、反省的に自分の認知そのものを認知の対象とするメタ認知が重要である。

適当です。
 

ソクラテスは、「無知の知」などで知られる古代ギリシアの哲学者です。
メタ認知とは、自分の思考や行動を客観視することです。
 

「汝自身を知れ」という格言をクリティカル・シンキングに対応させた場合、

「メタ認知」が重要であることが分かります。

選択肢2. J.S.ミルは誰もが干渉を受けずに個性を発展させ自由に討論することを重視したが、クリティカル・シンキングに対応させた場合、他者の視点に立ち多角的に考えることが重要である。

適当です。
 

J.S.ミルは、功利主義の発展に大きく貢献した、

19世紀のイギリスを代表する哲学者です。
 

「個性を発展させ自由に討論すること」をクリティカル・シンキングに対応させた場合、

「他者の視点に立ち多角的に考えること」が重要であることが分かります。

選択肢3. デカルトは理性を用いて確実な真理から演繹法でほかの知識を導き出すべきだと考えたが、クリティカル・シンキングに対応させた場合、いくつかの前提から論理的に結論を導く推論を活用することが重要である。

適当です。
 

デカルトは、「近代哲学の父」と呼ばれる、フランスの哲学者です。
演繹法とは、前提条件から論理的に結論を導き出す思考法です。
 

「理性を用いて確実な真理から演繹法でほかの知識を導き出すこと」

クリティカル・シンキングに対応させた場合、

「いくつかの前提から論理的に結論を導く推論を活用すること」

重要であることが分かります。

選択肢4. デューイは知性を問題解決の道具として用いるという道具主義を唱えたが、クリティカル・シンキングに対応させた場合、簡略化された直感的な解決手順であるヒューリスティックに頼らない態度が重要である。

適当でないものです。
 

デューイは、

経験に基づく学習と進歩主義教育を提唱したことで知られるアメリカの哲学者です。
 

ヒューリスティックとは、

ある程度正解に近い解を見つけ出すための経験則や発見方法のことです。
 

「道具主義」をクリティカル・シンキングに対応させた場合、

「知性を含めた様々な方法を問題解決の道具として活用すること」

が重要であることが分かります。
 

つまり、ヒューリスティックに頼ることも許容されます。
 

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02

クリティカルシンキングについての問題です。
適当でないものを選ぶ点に注意しましょう。
ちなみに各選択肢の前半にある思想についての情報部分はすべて正文です。

選択肢1. ソクラテスは「汝自身を知れ」という格言を捉え直したが、クリティカル・シンキングに対応させた場合、反省的に自分の認知そのものを認知の対象とするメタ認知が重要である。

正文です。
「『汝自身を知れ』という格言を捉え直した」という態度が
「反省的に自分の認知そのものを認知の対象とするメタ認知」の姿勢と一致します。

選択肢2. J.S.ミルは誰もが干渉を受けずに個性を発展させ自由に討論することを重視したが、クリティカル・シンキングに対応させた場合、他者の視点に立ち多角的に考えることが重要である。

正文です。
「他者の視点に立ち多角的に考えることが重要」であり、
これはクリティカルシンキングの「自他の主張の内容を論理的・客観的に検討する」態度です。

選択肢3. デカルトは理性を用いて確実な真理から演繹法でほかの知識を導き出すべきだと考えたが、クリティカル・シンキングに対応させた場合、いくつかの前提から論理的に結論を導く推論を活用することが重要である。

正文です。
「理性を用いて確実な真理から演繹法でほかの知識を導き出すべき」という態度が
「いくつかの前提から論理的に結論を導く推論を活用する」姿勢と一致します。

選択肢4. デューイは知性を問題解決の道具として用いるという道具主義を唱えたが、クリティカル・シンキングに対応させた場合、簡略化された直感的な解決手順であるヒューリスティックに頼らない態度が重要である。

誤文です。
ヒューリスティックはたしかに直感的な解決手順ですが、道具主義の考え方はそれを否定するものではありません。
ヒューリスティックは素早くある程度の正解に達するための合理的問題解決手段であり、「知性を問題解決の道具として用いるという道具主義」と重なる部分があります。

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