大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和7年度(2025年度)本試験
問44 (公共,政治・経済(第4問) 問5)
問題文
X:新型コロナウイルスの世界的な拡散や、ロシアのウクライナ侵攻などは、これまでの国際的な制度や取決めに基づく国際秩序に見直しを求めるもののようにみえるけど、どうだろう。新型コロナウイルスの感染拡大は、先進主要各国に(a)緊急の歳出拡大を迫ったという以上に、(b)経済のグローバル化に潜むリスクを表面化させたといえるんじゃないかな。
Y:そうかな、2008年の世界金融危機も大きな混乱を世界経済にもたらしたし、新型コロナウイルスによる混乱が特別といえるのかな。
X:新型コロナウイルスの感染拡大の場合には、(c)世界経済の分断が懸念されたところが特殊で、その点が重要だと思うよ。
Y:ロシアのウクライナ侵攻については、どうかな。軍事侵攻をめぐる問題はこれまでにもみられたけど、1990年のイラクのクウェート侵攻では国際連合(国連)の安全保障理事会(安保理)が対応したよね。
X:ロシアのウクライナ侵攻では、領土の違法な併合を試みたのが安保理常任理事国だった点で、ほかの事例とは区別すべきだよ。(d)国際刑事裁判所(ICC)の検察官が早くから捜査に乗り出したのも、この事件の特殊性を示していると思うよ。
Y:今回の軍事侵攻では、国連、とくに安保理が十分に対応できなかったのはやっぱり問題だよね。(e)国連憲章に基づく秩序に対する信頼をどうやって維持していくか、考えていかないといけないね。
X:国連憲章は国際平和とともに、基本的人権の尊重も目的としているね。そのためには、民主主義の世界的な実現と定着が重要だと思うけど、どうかな。
Y:その点を考える上では、2011年頃に始まった(f)「アラブの春」に注目したいね。どのような政治体制を選ぶかは、各国の国民に委(ゆだ)ねられているけれど、民主主義国家間では戦争は起きないという考えもあるし、民主主義が世界的に定着することは、安定した国際秩序を維持するために重要だと思うよ。
下線部(e)について、生徒Xと生徒Yは、安保理の常任理事国による拒否権行使を制約する仕組みが必要だと考えた。そこで、新聞のデータベースで過去の試みを調べたところ、次の記事をみつけた。この記事で報じられている決議に関する説明として最も適当なものを、後の選択肢のうちから一つ選べ。
安保理常任理事国の拒否権に説明を求める 国連総会が決議採択
国連総会は26日、安全保障理事会で常任理事国が決議の採択に反対した場合、総会の場で説明を求める決議を採択した。ウクライナ侵攻をめぐる安保理での審議で改めて問題となった拒否権の乱用を抑制することが意図されている。拒否権を持つ安保理常任理事国5カ国のうち米英仏、原案を作成したリヒテンシュタインなど82カ国が共同提案した。同決議は、拒否権が行使された場合には、10日以内に国連総会議長が総会を招集し、安保理での決議案の対象とされた事態について討議することを定めた。その際、拒否権を行使した国がまず壇上に立ち、発言することが予定されている。
(2022年4月27日夕刊)
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問題
大学入学共通テスト(公民)試験 令和7年度(2025年度)本試験 問44(公共,政治・経済(第4問) 問5) (訂正依頼・報告はこちら)
X:新型コロナウイルスの世界的な拡散や、ロシアのウクライナ侵攻などは、これまでの国際的な制度や取決めに基づく国際秩序に見直しを求めるもののようにみえるけど、どうだろう。新型コロナウイルスの感染拡大は、先進主要各国に(a)緊急の歳出拡大を迫ったという以上に、(b)経済のグローバル化に潜むリスクを表面化させたといえるんじゃないかな。
Y:そうかな、2008年の世界金融危機も大きな混乱を世界経済にもたらしたし、新型コロナウイルスによる混乱が特別といえるのかな。
X:新型コロナウイルスの感染拡大の場合には、(c)世界経済の分断が懸念されたところが特殊で、その点が重要だと思うよ。
Y:ロシアのウクライナ侵攻については、どうかな。軍事侵攻をめぐる問題はこれまでにもみられたけど、1990年のイラクのクウェート侵攻では国際連合(国連)の安全保障理事会(安保理)が対応したよね。
X:ロシアのウクライナ侵攻では、領土の違法な併合を試みたのが安保理常任理事国だった点で、ほかの事例とは区別すべきだよ。(d)国際刑事裁判所(ICC)の検察官が早くから捜査に乗り出したのも、この事件の特殊性を示していると思うよ。
Y:今回の軍事侵攻では、国連、とくに安保理が十分に対応できなかったのはやっぱり問題だよね。(e)国連憲章に基づく秩序に対する信頼をどうやって維持していくか、考えていかないといけないね。
X:国連憲章は国際平和とともに、基本的人権の尊重も目的としているね。そのためには、民主主義の世界的な実現と定着が重要だと思うけど、どうかな。
Y:その点を考える上では、2011年頃に始まった(f)「アラブの春」に注目したいね。どのような政治体制を選ぶかは、各国の国民に委(ゆだ)ねられているけれど、民主主義国家間では戦争は起きないという考えもあるし、民主主義が世界的に定着することは、安定した国際秩序を維持するために重要だと思うよ。
下線部(e)について、生徒Xと生徒Yは、安保理の常任理事国による拒否権行使を制約する仕組みが必要だと考えた。そこで、新聞のデータベースで過去の試みを調べたところ、次の記事をみつけた。この記事で報じられている決議に関する説明として最も適当なものを、後の選択肢のうちから一つ選べ。
安保理常任理事国の拒否権に説明を求める 国連総会が決議採択
国連総会は26日、安全保障理事会で常任理事国が決議の採択に反対した場合、総会の場で説明を求める決議を採択した。ウクライナ侵攻をめぐる安保理での審議で改めて問題となった拒否権の乱用を抑制することが意図されている。拒否権を持つ安保理常任理事国5カ国のうち米英仏、原案を作成したリヒテンシュタインなど82カ国が共同提案した。同決議は、拒否権が行使された場合には、10日以内に国連総会議長が総会を招集し、安保理での決議案の対象とされた事態について討議することを定めた。その際、拒否権を行使した国がまず壇上に立ち、発言することが予定されている。
(2022年4月27日夕刊)
- この決議は、総会が上位機関として安保理を管理監督する権限を国連憲章によって与えられていることを確認し、その権限の行使として総会が安保理の活動に制限をかけるものとして採択されたものである。
- この決議は、安保理が積極的に対応する必要がないと考えた場合であっても、総会が必要と判断した場合には安保理による強制措置の発動を義務づける仕組みを導入しようとしたものである。
- この決議は、国際の平和と安全の維持について安保理が有する権限を尊重しつつ、国連憲章が扱う問題全般に及ぶ総会自身の権限に基づいて拒否権の行使をとくに取り上げ、討議の対象とすることとしたものである。
- この決議は、総会が「平和のための結集」決議に基づいて、総会として強制措置を加盟国に命じるべきかを判断するために、安保理での審議状況について、とくに常任理事国から説明を受けることとしたものである。
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