大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和6年度(2024年度)追・再試験
問43 (<旧課程>倫理(第2問) 問4)
問題文
次の会話は、高校生CとDが、倫理の授業で日本思想について学習した後に交わしたものである。
C:ねぇ、星を見るのは好き?
D:どうしたの、急に。
C:さっきの授業でa 儒教の「天」という言葉があったでしょう。それで連想したのだけれど、私は天体観測が好きなんだ。望遠鏡を覗くのもいいけれど、肉眼で空の全体を眺めるのも好き。あんなふうに人間の手から遠く離れた天上に、美しく秩序立った世界があると思うと、なぜだかほっとするんだ。
D:そうなんだね。休みの日には遠くへ星を見に行ったりもするの?
C:うん、街の中ではなかなか見えづらいから、山へ行くこともあるよ。自然の中を歩いていると、b 自然には何か大きな力があるって感じるんだ。
D:そうか、それは素敵だね。私はね、模型を組み立てたり、自分でパソコンを作ったりしていると楽しくって。自分で整然としたシステムを作り上げていくことにわくわくするんだ。少し前の授業で仏教について習ったときも、c 現実社会の中で理想を実現しようとした仏教者の考えに共感したんだよね。Cさんの言葉を借りれば、自分の手元で美しく秩序立った世界を作ることに、喜びを感じるのかな。
C:なるほどね。私たちの趣味はかなり違うのに、同じように秩序立ったものが好きだという共通点があるんだね。
D:そうだね、話していて初めて気がついたよ。秩序というのは面白いテーマかもしれないね。もう少し一緒に調べて考えてみようか。
この数日後、CとDは二宮尊徳に関する次の資料について、後の会話を交わした。会話中のa・bに入る記述の組合せとして最も適当なものを、後の回答選択肢のうちから一つ選べ。
資料
天理*と人道との違いを区別できる人は少ない。人身があれば欲があるというのは天理である。田畑に草が生えるのと同じである。堤は崩れ、堀は埋まり、橋は朽ちる、これが天理である。しかし、人道は、私欲を制することを道とし、田畑の草を取るのを道とし、堤を築き、堀はさらい、橋は掛け替えるのを道とする。このように、天理と人道はまったく別のものであるから、天理は永久に変化せず、人道は一日怠るとたちまち廃れてしまう。そのため、人道は勤めることを尊び、自然に任せることを尊ばない。
(『二宮翁夜話』より)
*天理:天道のこと
C:天理と人道についての文章だね。ここでは( a )と述べられているね。
D:そうだね。二宮尊徳は( b )と学んだけれど、それと関係があるかな。
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問題
大学入学共通テスト(公民)試験 令和6年度(2024年度)追・再試験 問43(<旧課程>倫理(第2問) 問4) (訂正依頼・報告はこちら)
次の会話は、高校生CとDが、倫理の授業で日本思想について学習した後に交わしたものである。
C:ねぇ、星を見るのは好き?
D:どうしたの、急に。
C:さっきの授業でa 儒教の「天」という言葉があったでしょう。それで連想したのだけれど、私は天体観測が好きなんだ。望遠鏡を覗くのもいいけれど、肉眼で空の全体を眺めるのも好き。あんなふうに人間の手から遠く離れた天上に、美しく秩序立った世界があると思うと、なぜだかほっとするんだ。
D:そうなんだね。休みの日には遠くへ星を見に行ったりもするの?
C:うん、街の中ではなかなか見えづらいから、山へ行くこともあるよ。自然の中を歩いていると、b 自然には何か大きな力があるって感じるんだ。
D:そうか、それは素敵だね。私はね、模型を組み立てたり、自分でパソコンを作ったりしていると楽しくって。自分で整然としたシステムを作り上げていくことにわくわくするんだ。少し前の授業で仏教について習ったときも、c 現実社会の中で理想を実現しようとした仏教者の考えに共感したんだよね。Cさんの言葉を借りれば、自分の手元で美しく秩序立った世界を作ることに、喜びを感じるのかな。
C:なるほどね。私たちの趣味はかなり違うのに、同じように秩序立ったものが好きだという共通点があるんだね。
D:そうだね、話していて初めて気がついたよ。秩序というのは面白いテーマかもしれないね。もう少し一緒に調べて考えてみようか。
この数日後、CとDは二宮尊徳に関する次の資料について、後の会話を交わした。会話中のa・bに入る記述の組合せとして最も適当なものを、後の回答選択肢のうちから一つ選べ。
資料
天理*と人道との違いを区別できる人は少ない。人身があれば欲があるというのは天理である。田畑に草が生えるのと同じである。堤は崩れ、堀は埋まり、橋は朽ちる、これが天理である。しかし、人道は、私欲を制することを道とし、田畑の草を取るのを道とし、堤を築き、堀はさらい、橋は掛け替えるのを道とする。このように、天理と人道はまったく別のものであるから、天理は永久に変化せず、人道は一日怠るとたちまち廃れてしまう。そのため、人道は勤めることを尊び、自然に任せることを尊ばない。
(『二宮翁夜話』より)
*天理:天道のこと
C:天理と人道についての文章だね。ここでは( a )と述べられているね。
D:そうだね。二宮尊徳は( b )と学んだけれど、それと関係があるかな。
- a ― 天理が不変のものであるのに対して、人道は可変のものである b ― 父母や先祖に恩返しをするのではなく、天からの恩恵に報いるべきだと唱えた
- a ― 天理と人道は区別しがたいほど似ており、互いに反することはない b ― 農業を、天道と人道があいまって成り立つ営みであると考えた
- a ― 人道によって天理を変革することは、人としてのつとめである b ― 武士も含めた全ての人が、直接、農業に携わる社会を理想とした
- a ― 人道は、天理による荒廃に抗いつつ、人の手を加えて暮らしを保つ b ― 勤勉で節度ある生活をし、余剰を他者に譲ることで、社会に貢献することを説いた
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この過去問の解説 (2件)
01
この問題は二宮尊徳に関する、いわゆる国語問題です。
各選択肢にa,bがあり、資料や会話の情報から二択に絞り、
最後に知識から1つに絞りきるのが一般的な解法です。
しかし、今回の問題はその典型例とはなっていないため、参考程度に留めてください。
こうした資料は、国語の文章読解と同様で、具体と抽象から筆者の主張を読み取ったり、
「しかし」「このように」「そのため」などのディスコースマーカーを意識したりすると簡単に読み解くことができます。
この問題においては、資料における天理と人道の関係性を明確にしながら読む必要があります。
このようにして、資料中の主張を把握してから選択肢の正誤を判断すると円滑に解くことが可能です。
これは解説の主題ではありませんが、選択肢をチェックする際に消去法はあまりオススメしません。
資料中からは明確に判断できない要素が含まれており判断を留保せざるをえない選択肢が現れた際に困るためです。選択肢ごとに◯△✕をつける程度に留めることをオススメします。
aについて、資料に「天理は永久に変化せず、人道は一日怠るとたちまち廃れてしまう。」とあり、「天理が不変のものである」ことは読み取れるものの、「人道は可変のものである」とまでは書いていません。よって不適です。
bについても二宮尊徳を正しく説明した文章とは言えません。
解説の最後に二宮尊徳についてまとめています。
aについて、資料に「天理と人道はまったく別のものである」とあり、「天理と人道は区別しがたいほど似て」いることとは矛盾します。よって不適です。
bについては正文です。
aについて、資料に「天理は永久に変化せず」とあり、「人道によって天理を変革する」というのは言い過ぎになります。よって不適です。
bについては安藤昌益の万民直耕の考え方になります。
aについて、他の選択肢と異なり、「人道は、天理による荒廃に抗いつつ」という、天理を変える考えを含まない点が資料の文言と一致します。「人の手を加えて暮らしを保つ」というのも、「人道は勤めることを尊び、自然に任せることを尊ばない。」といった要素とリンクします。
bについても正文です。
今回の問題では具体的に解説できませんでしたが、
国語問題は解法の雛形があり、練習することで素早く解くことができます。
以下、二宮尊徳についてまとめます。
彼は、天道と人道を別のものと捉えながらもその両方を重視し、資料のように天道に感謝しつつも、それに隷従することなく人道を履行する姿勢を見せました。特にこれを農業に向きあう際の姿勢として重視しました。
また、報徳思想を唱え、天道や先祖が我々にもたらした徳に報いるよう主張しました。それが彼の倹約の態度につながっています。
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02
二宮尊徳の「天道」と「人道」に関する資料を読んで内容を把握する問題。
適切な選択肢ではありません。a誤文。文中から「天理が不変」という箇所を読み取ることができません。b誤文。二宮尊徳は「父母や先祖」に対する徳を持って特に報いるという考え方です。
適切な選択肢ではありません。a誤文。「天理と人道はまったく別のもの」と文中にあります。
適切な選択肢ではありません。a誤文。「人道によって天理を改革」するのではなく,農業は天道であり人道であるという考え方です。b誤文。
全ての人が農業に営む「万人直耕」は安藤昌益の考え方です。
適切な選択肢です。
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