共通テスト(公民) 過去問
令和5年度(2023年度)追・再試験
問47 (<旧課程>倫理(第3問) 問1)
問題文
かつてあるイギリスの首相は「社会なるものは存在しない。存在するのは個々の男と女であり、家族である」と語った。しかし、多様な人々が共に生きる場としての社会というものを本当に無視できるのだろうか。社会をめぐる近代の西洋思想をたどることを通じて、私たちにとって社会が持つ意味を考えてみよう。
社会への意識は、まずは人々が共存する秩序を自ら構築しようとするところから生まれた。ルネサンス期のa エラスムスやトマス・モアらの著作に見られるように、中世末期から近世初頭にかけて、共に生きる場である社会の仕組みやルールを私物化することへの先鋭な批判が現れた。そうした批判は、17世紀以降の絶対主義国家の成立の中で、b 国家との関係においてあるべき社会のルールを自ら定めようとする市民の思想の誕生へとつながっていくことになる。その後、c 歴史を通じておのずと社会の秩序が生成してきたと主張した思想家もいた。だがd ヘーゲルはそこに現れる矛盾を鋭く批判し、社会のあるべき姿を模索した。
また、e 人々が時に貧しく困難な生を送っているとき、それを社会全体が対応すべき問題なのだと考える発想を生み出したのも、社会を論じた思想家たちだった。そうした発想は、19世紀において、資本主義体制そのものがもたらす諸矛盾を鋭く批判する社会主義者をはじめとした、f 社会の変革を志向する様々な思想家を生み出した。後のフェビアン協会の思想に見られる福祉国家の構想も、こうした社会問題への対応から生み出されている。
g 社会は多様な人々が共存する場である。社会societyの語源となったラテン語socius(ソキウス)は仲間を意味する言葉だが、そうした仲間の絆(きずな)を超えた包摂性を持つことによってこそ、社会は今あるような意味を獲得してきた。だがh 社会に多様な他者を包摂しようとする努力は、常に一定のモデルに沿って人々を画一化するというリスクと隣り合わせだったことは否定できない。しかし、仲間を超えて人々を結び付ける社会を作り出してきた歴史そのものが、他者と共に生きることへの人間の要求を証している。だからこそ、「他者と共に」の意味を常に新たに鍛え上げていくことが私たちに繰り延べられた課題なのである。
下線部aに関して、エラスムスまたはトマス・モアについての説明として最も適当なものを、次の回答選択肢のうちから一つ選べ。
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問題
共通テスト(公民)試験 令和5年度(2023年度)追・再試験 問47(<旧課程>倫理(第3問) 問1) (訂正依頼・報告はこちら)
かつてあるイギリスの首相は「社会なるものは存在しない。存在するのは個々の男と女であり、家族である」と語った。しかし、多様な人々が共に生きる場としての社会というものを本当に無視できるのだろうか。社会をめぐる近代の西洋思想をたどることを通じて、私たちにとって社会が持つ意味を考えてみよう。
社会への意識は、まずは人々が共存する秩序を自ら構築しようとするところから生まれた。ルネサンス期のa エラスムスやトマス・モアらの著作に見られるように、中世末期から近世初頭にかけて、共に生きる場である社会の仕組みやルールを私物化することへの先鋭な批判が現れた。そうした批判は、17世紀以降の絶対主義国家の成立の中で、b 国家との関係においてあるべき社会のルールを自ら定めようとする市民の思想の誕生へとつながっていくことになる。その後、c 歴史を通じておのずと社会の秩序が生成してきたと主張した思想家もいた。だがd ヘーゲルはそこに現れる矛盾を鋭く批判し、社会のあるべき姿を模索した。
また、e 人々が時に貧しく困難な生を送っているとき、それを社会全体が対応すべき問題なのだと考える発想を生み出したのも、社会を論じた思想家たちだった。そうした発想は、19世紀において、資本主義体制そのものがもたらす諸矛盾を鋭く批判する社会主義者をはじめとした、f 社会の変革を志向する様々な思想家を生み出した。後のフェビアン協会の思想に見られる福祉国家の構想も、こうした社会問題への対応から生み出されている。
g 社会は多様な人々が共存する場である。社会societyの語源となったラテン語socius(ソキウス)は仲間を意味する言葉だが、そうした仲間の絆(きずな)を超えた包摂性を持つことによってこそ、社会は今あるような意味を獲得してきた。だがh 社会に多様な他者を包摂しようとする努力は、常に一定のモデルに沿って人々を画一化するというリスクと隣り合わせだったことは否定できない。しかし、仲間を超えて人々を結び付ける社会を作り出してきた歴史そのものが、他者と共に生きることへの人間の要求を証している。だからこそ、「他者と共に」の意味を常に新たに鍛え上げていくことが私たちに繰り延べられた課題なのである。
下線部aに関して、エラスムスまたはトマス・モアについての説明として最も適当なものを、次の回答選択肢のうちから一つ選べ。
-
エラスムスは、その著書『痴愚神礼讃』(『愚神礼讃』)において、自由意志を否定する立場から、当時の聖職者たちの私利私欲の追求を批判した。
- エラスムスは、古典文献や聖書について、文献学的な研究を数多く行い、宗教改革に影響を与えていくことになった。
- トマス・モアは、その著書『ユートピア』において、各自の私有財産が尊重され保護される理想郷を描き出した。
- トマス・モアは、人文主義者として教会の頑迷固陋(がんめいころう)な部分を痛烈に批判して、カトリックを否定し、イギリスにおける宗教改革を推進した。
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この過去問の解説 (3件)
01
ルネサンス期のヨーロッパで活躍した人文主義者の2人に関する知識を問われる問題です。
エラスムスは、その著書『痴愚神礼讃』(『愚神礼讃』)において、自由意志を否定する立場から、当時の聖職者たちの私利私欲の追求を批判した。
不正解です。
『痴愚神礼讃』(『愚神礼讃』)では聖職者たちの私利私欲の追及を批判していますが、
自由意志は否定していません。
正解です。
エラスムスは聖書を原点から研究し、文献学的な研究を行いました。
当時の教会腐敗、権威に執着する学者や表面上だけの信仰を風刺、批判した代表作が『痴愚神礼讃』(『愚神礼讃』)です。
不正解です。
トマス・モアは「ユートピア」の中では「各自の私有財産を持たない平等な社会」を理想郷として描いています。
不正解です。
トマス・モアは敬虔なカトリック信者で、教会の伝統や権威を重視する思想(=カトリックを肯定)の持ち主でした。
宗教改革に関しては、教会の腐敗を認める一方で、教会の分裂には反対しています。
しかしその後、ローマ教皇と対立したヘンリー8世がイングランド国教会を設立。
王の方針に反対したトマス・モアは反逆者として処刑されています。
宗教改革は世界史でも取り上げられるルネサンス期の重要な出来事です。
関係していた2人の関係性や、宗教改革にたいしてどのように関わっていたかを整理しておきましょう。
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02
エラスムスやトマス・モアについては頻出傾向にありますので、関連のワードも含めて覚えておきましょう。
エラスムスは、その著書『痴愚神礼讃』(『愚神礼讃』)において、自由意志を否定する立場から、当時の聖職者たちの私利私欲の追求を批判した。
不適当です。
『痴愚神礼讃』(『愚神礼讃』)は自由意志の「肯定」です。
正答です。
消去法で導きましょう。
不適当です。
トマス・モアが『ユートピア』で書いているのは私有財産の「尊重」ではなく、「共有財産性」です。
不適当です。
トマス・モアはカトリック信者としても知られています。
正答の選択肢をいきなり選び出すのはやや難しいと思いますので、他の選択肢の間違った部分を指摘できるようにしましょう。
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03
ルネサンス期の人文主義に関する問題です。
エラスムスは、その著書『痴愚神礼讃』(『愚神礼讃』)において、自由意志を否定する立場から、当時の聖職者たちの私利私欲の追求を批判した。
不適当
エラスムスは、その著書『痴愚神礼讃』(『愚神礼讃』)において、自由意志を肯定する立場から、当時の聖職者たちの私利私欲の追求を批判しました。
適当
エラスムスは、聖職者の偽善を風刺した『痴愚神礼讃』で知られる、ネーデルラント出身の人文主義者です。
不適当
トマス・モアは、その著書『ユートピア』において、各自が私有財産を持たない共同社会という理想郷を描き出しました。
不適当
トマス・モアは、人文主義者として教会の頑迷固陋(がんめいころう)な部分を痛烈に批判しましたが、カトリックを肯定し、イギリスにおける宗教改革に反対しました。
ルネサンス期の思想や、重要人物が社会に与えた影響についてチェックしておきましょう。
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