大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和5年度(2023年度)追・再試験
問42 (倫理(第2問) 問4)

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問題

大学入学共通テスト(公民)試験 令和5年度(2023年度)追・再試験 問42(倫理(第2問) 問4) (訂正依頼・報告はこちら)

以下のⅠを読み、後の問いに答えよ。なお、会話と問いのCとDは各々全て同じ人物である。

Ⅰ 高校生CとDは、縁をめぐって次の会話を交わした。

C:この前の倫理の授業、覚えてる?仏教の縁起の説明の中で、全てのものがつながり合って存在しているという話があったよね。
D:そうだね。ただ、日本で縁という場合には、人と人との出会いやつながりという意味で使われることが多いよね。
C:縁があるとかないとか、良縁とか悪縁とか、よく言われるね。日本人は、つながりや出会いという意味合いで、縁というものを考えてきたのかな。
D:そうかもしれないね。縁があっての出会いもあれば、縁が切れての別れもあるよね。昔の日本人は、そうした人の世のあり方にa 無常を感じていたと習ったのを覚えているよ。
C:人とのつながりといえば、私は、人間関係の理想的なあり方を説いたb 近世の思想の話が好きだな。人は、一人では生きられないでしょう。そういえば、今度の芸術鑑賞の授業では、c 親子の縁の話が出てくるそうだよ。
D:親子の縁かあ…。でも、d 近代になると、今度は個の自立、家からの独立が問われてくるわけだよね。気になってきたから、色々な文献を調べてみよう。

下線部dに関連して、近代における縁について関心を持ったCは、次のレポートを書き始めた。ただし、レポートには、適当でない箇所が一つある。夏目漱石または和辻哲郎の思想について説明した記述として適当でないものを、レポート中の下線部①〜④のうちから一つ選べ。

レポート
日本では、近代以降、個としての自立を模索する様々な思想運動が登場した。それはある意味で、古い縁を乗り越えて、個人としての新たな生き方を探求していく試みと言うことができると思う。
例えば、人とのつながりの中で、いかに生きるかを考えた人物に、夏目漱石がいる。夏目漱石は、エゴイズムに囚われた人間を描くことを通じて、自己ではなく他者を優先する高次の社会的関わりを追い求めた。また、晩年になって夏目漱石は、自我への執着を捨て去り、自然のままに生きる則天去私の境地を求めた
一方、西洋思想に由来する個人主義を批判したのが和辻哲郎である。人は孤立して存在するのではなく、人と人との関係において生きているがゆえに、和辻哲郎は共同体に注目した。和辻哲郎によると、日本人には自然に対して受容的・忍従的な特質が見られる。また、和辻哲郎は、『風土』の中で、日本の風土はモンスーン型、砂漠型、牧場型という三つの類型のうち、モンスーン型に属すると述べた
……
両者の思想は対立するように思えたが、しかし彼らの著作をよく読んでみれば、どちらにおいても個人はあくまで他者や自然との関わりの中での個人であるように思われた。このように見てきたとき、近代の人たちは、個の確立を目指しつつも、世界における新たなつながりのあり方を模索したと言えるのかもしれない。

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この過去問の解説 (2件)

01

悩ましい問題です。

夏目漱石の「エゴイズムに囚われた人間を描くこと」は『こころ』などにあります。

ただし、一般的には「他者を優先する高次の社会的関わり」のようには読まれていません。

選択肢1. ①

正答です。

『こころ』でエゴイズムに囚われた人間を描いてはいますが「他者を優先する高次の社会的関わり」はテーマになっていません。

夏目漱石の説明として適当ではありません。

 

選択肢2. ②

夏目漱石の「則天去私」についての説明となります。

選択肢3. ③

和辻哲郎が『風土』の中で書いている日本人の特徴についての説明となります。

選択肢4. ④

適切な説明となりますので正答ではありません。

砂漠型は厳しい自然や孤独、神への服従といった特徴があり、中東です。

牧場型は広く穏やかな自然や活動的といった特徴があり、ヨーロッパ地域が当てはまります。

モンスーン型は湿潤で変化の多い自然を表し、東アジアと日本が当てはまります。

まとめ

悩ましい問題ではありますが和辻哲郎の著書『風土』と夏目漱石の晩年の思想「則天去私」について理解があれば消去法で正解を求めることができます。

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02

夏目漱石と和辻哲郎の思想について問われている問題です。

和辻哲郎は「夏目先生の追憶」という書籍を執筆するほど、夏目漱石を深く敬愛していたと言われています。

選択肢1. ①

適当ではない

夏目漱石は他者を尊重しつつ、自己の個性も大切にするという姿勢を「自己本位」「個人主義」という言葉に込めました。

代表的な作品に「こころ」があります。

選択肢2. ②

適当

則天去私とは、私利私欲を捨て去り、天に従い自然の流れに身をまかせて生きていくことを意味しています。

則天去私の思想を取り入れた「明暗」は、晩年の夏目漱石の代表的な作品です。

選択肢3. ③

適当

モンスーン(季節風)の特徴は、強い暑熱と湿気の結合です。

巨大で圧倒的な自然を前に、人間は受容的・忍従的な我慢の態度を形成すると説いています。

選択肢4. ④

適当

モンスーン型は、東南アジアや中国、日本などに分布しています。

まとめ

夏目漱石と和辻哲郎の著作や思想について理解を深めておきましょう。

 

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