大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和5年度(2023年度)本試験
問52 (倫理(第3問) 問6)
問題文
DとEは勉強を重ね、オンラインで「自由」をテーマにしたプレゼンテーションを共同で行い、他校の高校生Fを交えたディスカッションに臨んだ。
D:……以上をまとめます。私たちは、上のスライド資料に示したように、自由について整理しました。
F:スライド資料の自己決定という側面について、気になることがあります。私は高校を卒業したら就職するつもりです。経済的にも自立して、主体的に自己決定を行う自由が手に入って自分の将来への期待もある反面、不安も感じてしまいます。好きに選べると、かえって何も選べないというか…。いっそのこと、誰かに決めてほしい気もしてしまうんです。
D:実は私も、迷ってばかりで先に進まない、自由を持て余している弱い自分を発見して、嫌になってしまうこともあります。自分はなんてe無力で不安定な存在なんだろうって。
E:確かに、自由がある種の強さを求めてくることってありますよね。でも人間は必ずしも強くなくてもよいと思うんです。自分の弱さを素直に認めることができれば、f他者の弱さを思うことができる。それに、迷いながらも下した選択は、迷った分だけ一層貴重に思えるのではないでしょうか。そう考えれば、g自由の中で迷うことにも意味がある気がします。
F:そうか…。迷うこと自体が大事なんですね。私は、自由のネガティブな側面ばかりを見ていた気がします。敷かれたレールがなくなって不安になっても自由を手放さず、迷いながら自分で決定していきたいと思います。
下線部fに関連して、他者についてのレヴィナスの思想の説明として最も適当なものを、次の回答選択肢のうちから一つ選べ。
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問題
大学入学共通テスト(公民)試験 令和5年度(2023年度)本試験 問52(倫理(第3問) 問6) (訂正依頼・報告はこちら)
DとEは勉強を重ね、オンラインで「自由」をテーマにしたプレゼンテーションを共同で行い、他校の高校生Fを交えたディスカッションに臨んだ。
D:……以上をまとめます。私たちは、上のスライド資料に示したように、自由について整理しました。
F:スライド資料の自己決定という側面について、気になることがあります。私は高校を卒業したら就職するつもりです。経済的にも自立して、主体的に自己決定を行う自由が手に入って自分の将来への期待もある反面、不安も感じてしまいます。好きに選べると、かえって何も選べないというか…。いっそのこと、誰かに決めてほしい気もしてしまうんです。
D:実は私も、迷ってばかりで先に進まない、自由を持て余している弱い自分を発見して、嫌になってしまうこともあります。自分はなんてe無力で不安定な存在なんだろうって。
E:確かに、自由がある種の強さを求めてくることってありますよね。でも人間は必ずしも強くなくてもよいと思うんです。自分の弱さを素直に認めることができれば、f他者の弱さを思うことができる。それに、迷いながらも下した選択は、迷った分だけ一層貴重に思えるのではないでしょうか。そう考えれば、g自由の中で迷うことにも意味がある気がします。
F:そうか…。迷うこと自体が大事なんですね。私は、自由のネガティブな側面ばかりを見ていた気がします。敷かれたレールがなくなって不安になっても自由を手放さず、迷いながら自分で決定していきたいと思います。
下線部fに関連して、他者についてのレヴィナスの思想の説明として最も適当なものを、次の回答選択肢のうちから一つ選べ。
- 他者は、顔を持たない無個性な存在であり、根本的に私と区別が付かないものとして、私と出会う。
- 他者と私とは、対等なものとして顔を合わせ、お互いを自己同一的な人格として承認し合う関係である。
- 他者とは、根本的に理解を超えた異質なものとして、彼方(かなた)から私をまなざす顔において、訴え掛けてくるものである。
- 他者に出会うためには、私自身が、生きるための労働の領域から出て、活動の主体として公共空間に自らの顔を現して発言しなければならない。
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この過去問の解説 (2件)
01
レヴィナスとは、「他者論」に関する思想で知られるフランスの哲学者です。
人間は「他者」の「顔」を通じて、無限の責任と倫理を自覚すると説きました。
不適当です。
この文章をレヴィナスの思想の説明として直すと
「他者は、顔を持つ個性的な存在であり、
根本的に私とは違う理解不可能な絶対的存在として、私と出会う。」になります。
不適当です。
この文章をレヴィナスの思想の説明として直すと
「他者と私とは、対等ではないものとして顔を合わせ、
他者は私とは根本的に違う理解不可能な絶対的存在として、
私に無限の責任を負わせる関係である。」になります。
適当です。
レヴィナスは著作「全体性と無限」などで、
他者とは根本的に私とは違う理解不可能な絶対的存在であり、
その「顔」が私に無限の責任を迫ると説きました。
不適当です。
これはドイツ出身のアメリカの思想家、
ハンナ・アーレントの思想についての説明です。
レヴィナスは私を「他者に無限の責任を迫る存在」としましたが、
アーレントは「公共空間に現れる主体」と説いています。
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02
この問題では、レヴィナスの思想について押える必要があります。
レヴィナスは「他者」という存在に対して、自己とは絶対的に違いがあり、理解できない存在だとしました。また、他者との出会いでは「顔」によって他者を認識し、アクションを求めてくるものだとしました。
不適切
「顔を持たない無個性な存在であり、根本的に私と区別が付かないもの」ではなく、レヴィナスは「他者」という存在に対して、自己とは絶対的に違いがあり、理解できない存在だとしました。
不適切
「お互いを自己同一的な人格として」ではなく、レヴィナスは「他者」という存在に対して、自己とは絶対的に違いがあり、理解できない存在だとしました。
適切
他者との出会いでは「顔」によって、他者を認識し、アクションを求めてくるものだとしました。
不適切
ハンナ・アーレントは「他者に出会うためには、私自身が、生きるための労働の領域から出て、活動の主体として公共空間に自らの顔を現して発言しなければならない。」と提唱しました。
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