大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和4年度(2022年度)追・再試験
問49 (<旧課程>倫理(第3問) 問3)

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問題

大学入学共通テスト(公民)試験 令和4年度(2022年度)追・再試験 問49(<旧課程>倫理(第3問) 問3) (訂正依頼・報告はこちら)

次の文章は、授業で、人間の「賢さ」について先生が問題提起したものである。人間はなぜ「ホモ・サピエンス(賢いヒト)」と呼ばれるのだろうか。自然界において、人間が高度な知性を持っていることは確かであり、そのことは人間の自然に対する関係に端的に現れる。近代科学のa 機械論的自然観は、人間を自然の支配者とみなす考え方を強めた。また、人間は古来、自然の本能のままに生きるのではなく、国家や社会を通じて生きる存在と定義されてきた。
しかし、近代の思想家はこうした人間の知性を手放しで礼賛したわけではない。b モラリストの中には、自然における人間の位置付けを謙虚に見つめ直す思想家もいた。他方、c 人間の自然状態の考察から出発して国家や社会を論じる思想家も現れた。こうした思想家たちの姿勢を参考に、人間の賢さの意味を問い直す必要がある。

下線部cに関連して、次のア・イは、国家や社会についての思想の説明であるが、それぞれ誰のものか。その組合せとして正しいものを、回答選択肢のうちから一つ選べ。

ア  人間は、自然状態において互いに闘争するが、死への恐怖の情念に駆られて平和を求める。こうして人々は自己保存の欲求のままに振る舞う権利を特定の人間や合議体に譲渡し、国家が形成される。
イ  人間は、自然状態においてそれぞれが自由で平等であるが、やがて私有財産が形成され不平等が生じる。これを解消するためには、共通の利益のみを目指す一般意志に基づく国家が必要である。
  • ア:ルソー   イ:ロック
  • ア:ルソー   イ:ホッブズ
  • ア:ロック   イ:ルソー
  • ア:ロック   イ:ホッブズ
  • ア:ホッブズ  イ:ルソー
  • ア:ホッブズ  イ:ロック

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は「ア:ホッブズ イ:ルソー」の選択肢です。

トマス・ホッブズ、ジョン・ロック、ジャン=ジャック・ルソーの3人は社会契約論を代表する3人の哲学者です。
社会契約論:政府が存在する以前の世の中の状況を予想し、人々が政府を生み出すメカニズムを説明する理論。

◆ホッブズの主張:
自然状態-世の中は「万人の万人に対する闘争(=人々が自己保身のために争いを続ける)」である。

争いを避けるために政府を作る契約(=社会契約)を結び、自分たちの権利を全面的に政府に譲渡。

権力を持った政府が法や秩序を維持し、平和な世界が生まれる。

◆ルソーの主張:
自然状態-世の中は、人々が他者への「憐れみの心」を持ち、お互いに助け合っている。

文明や学問が発達した結果、人々が憐みの心を失ってしまい、不平等な世の中が形成された。

人々が社会契約を結ぶことによって、共同体全体の利益である「一般意志」を実現することができる。

◆ロックの主張:
自然状態-世の中は、自由で平等で平和である。

人々が自由に行動した結果、富を持つ人々と持たない人々が生まれ、争いが発生。
争いが起きると、人々が本来持っていた自分の財産を自分のものだと主張する権利(=財産権)が守られなくなる。

人々は争いを避けるために社会契約を結び、自分たちの権利の一部を政府に譲渡。
もし、政府が国民の権利を侵害してきた場合は、国民には政府に対して抵抗する権利(=抵抗権)がある。
 

選択肢1. ア:ルソー   イ:ロック

不正解です。

選択肢2. ア:ルソー   イ:ホッブズ

不正解です。

選択肢3. ア:ロック   イ:ルソー

不正解です。

選択肢4. ア:ロック   イ:ホッブズ

不正解です。

選択肢5. ア:ホッブズ  イ:ルソー

正解です。

選択肢6. ア:ホッブズ  イ:ロック

不正解です。

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02

自然状態から社会契約に至る過程に関する設問である。

代表的なホッブズ、ロック、ルソーの各人の主張をきちんと押さえることで確実に得点源としたいところです。

選択肢1. ア:ルソー   イ:ロック

ア:ホッブズの説明です。ルソーはイを参考にしましょう。

イ:ルソーの説明です。ロックは、自然状態を不安定ながらも平和な状態とし、不安定を乗り越えるために自然権を国家に信託すると唱えています。

選択肢2. ア:ルソー   イ:ホッブズ

ア:ホッブズの説明です。ルソーはイを参考にしましょう。

イ:ルソーの説明です。ホッブズはアを参考にしましょう。

選択肢3. ア:ロック   イ:ルソー

ア:ホッブズの説明です。ロックは、自然状態を不安定ながらも平和な状態とし、不安定を乗り越えるために自然権を国家に信託すると唱えています。

イ:適切です。

選択肢4. ア:ロック   イ:ホッブズ

ア:ホッブズの説明です。ロックは、自然状態を不安定ながらも平和な状態とし、不安定を乗り越えるために自然権を国家に信託すると唱えています。

イ:ルソーの説明です。ホッブズはアを参考にしましょう。

選択肢5. ア:ホッブズ  イ:ルソー

正答です。どちらも適切です。

選択肢6. ア:ホッブズ  イ:ロック

ア:適切です。

イ:ルソーの説明です。ロックは、自然状態を不安定ながらも平和な状態とし、不安定を乗り越えるために自然権を国家に信託すると唱えています。

まとめ

ロックやルソーは社会契約説に関する設問以外でも見られる頻出の人物のため、他に述べている理論も合わせて学習しましょう。

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03

正解は、「ア:ホッブズ イ:ルソー」です。

 

ホッブズ、ロック、ルソーは、社会契約論を唱えた近代政治思想家です。

ホッブズは、人間を利己的な存在と捉えて、自然状態では闘争を招くと捉えています。

ロックは、人間を理性的な存在と捉えて、自然状態は平和であると捉えています。

ルソーは、人間を未発達な存在と捉えて、自然状態は自由で平等な社会ですが、財産所有が絡むと問題が生じると唱えています。

 

以下、解説になります。

選択肢1. ア:ルソー   イ:ロック

自然状態で闘争がおこるとしたのは、ホッブズです。

私有財産の問題が生じるとしたのは、ルソーです。

選択肢2. ア:ルソー   イ:ホッブズ

自然状態で闘争がおこるとしたのは、ホッブズです。

私有財産の問題が生じるとしたのは、ルソーです。

選択肢3. ア:ロック   イ:ルソー

自然状態で闘争がおこるとしたのは、ホッブズです。

 

選択肢4. ア:ロック   イ:ホッブズ

自然状態で闘争がおこるとしたのは、ホッブズです。

私有財産の問題が生じるとしたのは、ルソーです。

選択肢5. ア:ホッブズ  イ:ルソー

正解は、この肢です。

前述の通り、自然状態で闘争がおこるとしたのはホッブズであり、私有財産の問題が生じるとしたのはルソーです。

選択肢6. ア:ホッブズ  イ:ロック

私有財産の問題が生じるとしたのは、ルソーです。

まとめ

ホッブズ、ロック、ルソーは、社会契約論の思想に関してよく問われる分野です。

三者を比較して覚えておくとよいでしょう。

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