大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和4年度(2022年度)追・再試験
問92 (政治・経済(第4問) 問2)

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問題

大学入学共通テスト(公民)試験 令和4年度(2022年度)追・再試験 問92(政治・経済(第4問) 問2) (訂正依頼・報告はこちら)

生徒X、生徒Yおよび生徒Zは、「政治・経済」の授業でグループ発表をすることになり、その準備をしている。生徒たちが放課後にスマートフォンで行ったやりとりの一部が、以下の画像である。

スマートフォン画面画像内の下線部bに関連して、生徒Xは、1980年から2019年の日本の完全失業率とインフレ率(対前年消費者物価上昇率)の推移を調べて次の二つの図を作成した。図1は、横軸に時間を、縦軸に完全失業率とインフレ率をとり、これらの推移を示している。図2は、インフレ率と完全失業率の関係をとらえるために、横軸に完全失業率、縦軸にインフレ率をとり、両者の関係を散布図として表したものである。これらの図をもとに日本経済の状況を考察した記述として最も適当なものを、回答選択肢のうちから一つ選べ。
問題文の画像
  • 消費税率が5パーセントに引き上げられた1997年や8パーセントに引き上げられた2014年には、消費税率の引上げ幅にほぼ見合った消費者物価の上昇が記録された。このように間接税の導入や税率の上昇により消費者物価が上昇する現象は、ディマンド・プル・インフレーションと呼ばれる。
  • 1980年から2019年では、完全失業率が上昇するときにはインフレ率が低下し、逆に完全失業率が低下するときにはインフレ率が上昇するという関係がおおよそ成立しているといえる。このように完全失業率とインフレ率の間に負の関係が観測される現象は、スタグフレーションと呼ばれる。
  • 1990年代初めにバブル経済が崩壊して以降2019年まで、完全失業率は上昇傾向を示している。とくに、リーマン・ショック後の世界的金融危機の影響を受けた景気後退によって、完全失業率は大きく上昇した。このように景気後退に伴って完全失業率が上昇する現象は、ハイパーインフレーションと呼ばれる。
  • 1990年代半ば以降、マイナスのインフレ率が複数回観測されたが、消費者物価の下落は企業収益の減少と雇用の縮小につながり、完全失業率が上昇する傾向がある。雇用の縮小は消費財への需要を減少させるので、さらに消費者物価の下落をもたらす。これらが連鎖的に続いていく現象は、デフレスパイラルと呼ばれる。

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この過去問の解説 (2件)

01

デマンドプルインフレーション

需要が供給を上回ることで物価が持続的に上昇する現象を指します。景気が好調で消費や投資が拡大し、生産が追いつかない状態になると起こります。典型的には好況期のインフレで、企業の売上や利益が増える反面、物価上昇が続くため実質購買力に影響を与える場合があります。

スタグフレーション

景気が停滞または後退しているにもかかわらず、物価が高止まりまたは上昇を続ける状況を指します。通常、景気後退期には物価は下がる傾向にありますが、供給ショックやコスト上昇により同時進行でインフレが進むため、失業率の増加と物価上昇が併存する厳しい経済状況となります。

ハイパーインフレーション

極めて高い水準で物価が急激に上昇し、貨幣価値が短期間で大幅に下落する現象を指します。しばしば月単位で数十%を超えるインフレ率を記録します。戦争や財政破綻などによる過度の紙幣増発が原因となり、国民は貨幣への信頼を失い、物々交換や外貨依存が進む深刻な経済混乱を引き起こします。

デフレスパイラル

物価が持続的に下落し、それに伴って企業の売上や利益が減少、雇用や賃金が抑制され、さらに需要が縮小するという悪循環を指します。需要不足が長期化すると企業倒産や失業増加につながり、経済全体が停滞に陥ります。消費者心理としても「将来さらに安くなる」と考えて支出を控えるため、デフレ圧力が強まっていきます。

選択肢1. 消費税率が5パーセントに引き上げられた1997年や8パーセントに引き上げられた2014年には、消費税率の引上げ幅にほぼ見合った消費者物価の上昇が記録された。このように間接税の導入や税率の上昇により消費者物価が上昇する現象は、ディマンド・プル・インフレーションと呼ばれる。

本選択肢は、増税による消費者物価の上昇について説明したものです。

増税による消費者物価の上昇は、インフレとは直接関係はありません。

従って、不正解です。


 

選択肢2. 1980年から2019年では、完全失業率が上昇するときにはインフレ率が低下し、逆に完全失業率が低下するときにはインフレ率が上昇するという関係がおおよそ成立しているといえる。このように完全失業率とインフレ率の間に負の関係が観測される現象は、スタグフレーションと呼ばれる。

本選択肢の説明は、通常の景気とインフレとの関係を表すものです。

従って、不正解です。

選択肢3. 1990年代初めにバブル経済が崩壊して以降2019年まで、完全失業率は上昇傾向を示している。とくに、リーマン・ショック後の世界的金融危機の影響を受けた景気後退によって、完全失業率は大きく上昇した。このように景気後退に伴って完全失業率が上昇する現象は、ハイパーインフレーションと呼ばれる。

本選択肢は、インフレーションではなく通常の景気後退時に起こる現象を説明するものです。

従って、不正解です。

選択肢4. 1990年代半ば以降、マイナスのインフレ率が複数回観測されたが、消費者物価の下落は企業収益の減少と雇用の縮小につながり、完全失業率が上昇する傾向がある。雇用の縮小は消費財への需要を減少させるので、さらに消費者物価の下落をもたらす。これらが連鎖的に続いていく現象は、デフレスパイラルと呼ばれる。

本選択肢の場合をデフレスパイラルと呼びます。

従って、正解です。

まとめ

政経は暗記でなく、用語の意味を理解し、自分で説明できるくらいにしておくとこういう問題にも対応できるでしょう。

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02

デマンドプルインフレーション

景気の拡大によって、需要の増大とともに物価が上昇していく、いわゆる「いいインフレ」を指します。

スタグフレーション

景気の低迷と並行して物価が上昇していく現象、「不況下のインフレ」を指します。

ハイパーインフレーション

急激な物価上昇により通貨価値が急激に下落する現象を指します。

デフレスパイラル

景気後退が物価の下落を招き、それが更なる景気後退と更なる物価下落の引き金となる現象を指します。


 

選択肢1. 消費税率が5パーセントに引き上げられた1997年や8パーセントに引き上げられた2014年には、消費税率の引上げ幅にほぼ見合った消費者物価の上昇が記録された。このように間接税の導入や税率の上昇により消費者物価が上昇する現象は、ディマンド・プル・インフレーションと呼ばれる。

本選択肢の場合、増税による消費者物価の上昇の記述です。

増税による消費者物価の上昇は、インフレとは直接関係はありません。

従って、不正解です。

選択肢2. 1980年から2019年では、完全失業率が上昇するときにはインフレ率が低下し、逆に完全失業率が低下するときにはインフレ率が上昇するという関係がおおよそ成立しているといえる。このように完全失業率とインフレ率の間に負の関係が観測される現象は、スタグフレーションと呼ばれる。

本選択肢の場合は、通常の景気とインフレとの関係に該当します。

従って、不正解です。

選択肢3. 1990年代初めにバブル経済が崩壊して以降2019年まで、完全失業率は上昇傾向を示している。とくに、リーマン・ショック後の世界的金融危機の影響を受けた景気後退によって、完全失業率は大きく上昇した。このように景気後退に伴って完全失業率が上昇する現象は、ハイパーインフレーションと呼ばれる。

本選択肢の場合は、インフレーションではなく通常の景気後退時の現象です。

従って、不正解です。

選択肢4. 1990年代半ば以降、マイナスのインフレ率が複数回観測されたが、消費者物価の下落は企業収益の減少と雇用の縮小につながり、完全失業率が上昇する傾向がある。雇用の縮小は消費財への需要を減少させるので、さらに消費者物価の下落をもたらす。これらが連鎖的に続いていく現象は、デフレスパイラルと呼ばれる。

本選択肢の場合をデフレスパイラルと呼びます。

従って、正解です。

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